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学部長から

2025年度 社会学部長  空閑 浩人(くが ひろと)

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 2025年、同志社大学社会学部は2005年の設立から20周年を迎えました。社会学科、社会福祉学科、メディア学科、産業関係学科、教育文化学科の個性豊かな5学科で構成された学部です。

 社会学部の拠点となる新町キャンパスでは、静かな環境とアットホームな雰囲気のなかで、学生たちが思い思いに学び、語らいの時を過ごしています。新町キャンパスの正門をくぐると、校舎の壁に大きく彫られた「人一人ハ大切ナリ」という言葉が目に飛び込んできます。同志社で学ぶ学生一人ひとりが大切にされる場所でありたいという、校祖新島襄が遺した言葉です。
 この言葉の下で、人と社会に関することを幅広く、そして深く学べる学部が社会学部です。

 私たちの生活は、2020年の新型コロナウイルス感染症の拡大以降、様々な制限のなかにありました。最近では、コロナ前の日常を取り戻したように見えます。しかしながら、明るい話題ばかりではありません。コロナ禍の日本で顕在化した孤独・孤立の問題や生活困窮の問題は、一層深刻化する状況にあります。11年ぶりに増加したと報じられた2020年の自殺者数の内訳では、特に女性と子どもの数が顕著に増大したことが示されています。この傾向が続くなかで、2024年には小中高生の自殺者数が500人を超えて、統計史上最多を更新したとされています。
 孤独や孤立の問題は、今や生命にかかわる問題です。社会の一員として、すなわち地域の、職場の、学校の一員として、あるいは家族の一員として、人や場所とのつながりのなかで生きるという、その基盤となるものが脅かされ、多くの人々が深い孤独や孤立を強いられる状況があります。

 世界に目を向けると、依然として戦争のニュースが続いています。国籍や宗教、文化や言語の違いを超えて互いに尊重しあう社会の実現、争いを決して軍事力ではなく、ひたすらに話し合いを重ねることで解決するという道の遠さを感じています。自ら平和を壊す人間の愚かさを痛切に感じつつ、そして自らも同じ人間であることを覚えつつ、しかしそれでも人間性への信頼と解決の可能性をあきらめず、人間の英知を結集して、なんとかこの状況が一刻も早く終わって欲しいと祈る毎日です。

 子どもから高齢者まで、誰もが安心して暮らせる社会とはどのようなものでしょうか。人が生きるとは何か、いのちとは何か、生活や暮らしとは何か、それが支えられるとはどういうことでしょうか。今こそ、私たちは考えないといけないと思います。
 人々の交流や対話を大切にして、人や社会のゆとりや寛容さの維持や回復に貢献する学び、人々の間に壁をつくり隔てる言葉ではなく、多様な人々をつなげて包摂する言葉を数多く生み出して発信できる学びを、この社会学部で皆さんとともにしたいと思います。そして、そのための材料や機会は、皆さんの周りにたくさんあります。

 社会学部での学生生活を楽しく充実したものにするために、私たち教員は一生懸命応援します。
 皆さんの一生の財産となるであろう4年間を私たちと一緒に過ごしませんか。
 同志社大学社会学部へようこそ!

2023年度・2024年度 社会学部長  浦坂 純子(うらさか じゅんこ)

Into the Field 社会で学ぶ

授業風景

同志社大学 社会学部長  浦坂 純子(2023.4.1~2025.3.31)

 同志社大学社会学部は、2005年に文学部の改組・転換により、当時の社会学科4専攻(社会学専攻・社会福祉学専攻・メディア学専攻・産業関係学専攻)と文化学科の教育学専攻を母体として設立されました。間もなく20周年を迎えようとしています。

 拠点とする新町キャンパスは、今出川キャンパスにほど近い閑静な住宅街の中にあり、落ち着いて勉強するには最適な環境です。2023年春には育真館(体育館)の跡地に新創館という新しい校舎が竣工し、その1階には念願のラーニングスペースが作られ、設備面でも今後一層の充実が見込まれています。

 社会学部の特徴は、その設立の経緯から、5学科の個性が際立っていることが挙げられます。入学定員も学科ごとに設定されており、何事も学科単位で動いています。それゆえ「社会学部」としてのまとまりは少し見えにくいかもしれません。しかし、私たちが生きる「社会」はとても複雑です。様々な角度から読み解く必要に迫られています。

 2023年は関東大震災から100年ということで、防災関連の報道が目立つようになりました。日本は災害大国です。先日、NHKで「南海トラフ巨大地震」というドラマ仕立ての番組が放送されていました。引退して故郷の高知で暮らす老夫婦、その長男家族が大阪に、長女が東京にいて地震に遭遇するというストーリーです。

 長男は夫婦と息子1人の3人家族で、夫は町工場の2代目、妻はパート、小学生の息子は学校で防災教育を受け、風呂に水を溜めておいたり、あらかじめ避難場所を決めておいたりと積極的でした。家族の描かれ方や防災教育のあり方などは、社会学科、教育文化学科で取り上げられそうです。

 大津波に見舞われた高知では、地域で助け合って避難します。高齢者や身体の不自由な人を誰が助けるのか、避難所でどのような配慮が必要か、社会福祉学科で掘り下げられるかもしれません。メディアの報道の仕方一つで、危機意識が高まることもあれば、油断してしまうこともあります。普段からどんな情報をどういう形で伝えていくのか、メディア学科ではそういうことも考察できるでしょう。

 町工場の事業継承や吸収合併、既婚女性のパート就業などは、雇用や労働を扱う産業関係学科のフィールドです。加えて、キャリアという視点では、東北から高知に移住し、地域を支える一員となっていた男性も印象的でした。色々な生き方、社会とのかかわり方、キャリアの選択肢が広がっているのが「今」という時代です。

 ドラマの最後に、東京の大学で社会科学を学び始めたという女子学生が高知に帰省して、「何の勉強をしているの?」と尋ねられるシーンがありました。「データを解析して、人間の思考や行動をマーケティングやサービスに活かして……簡単に言ったら未来を良くするための勉強かな。」なるほど! 

 社会の全てが学びの場。その社会で生きる私たちの未来を良くするために学ぶ。より良い社会の構築に資する人を目指して、充実した4年間をともに過ごしましょう。同志社大学社会学部へようこそ!